日本一きれいな花火大会へ

~終了直後にゴミを集めて起きた小さな奇跡~

 いったん中止が発表された後、市民の力で「復活」した第69回鎌倉花火大会。開催のために毎年どれだけ多くの人が頑張っていたのか、その舞台裏を知った僕たちにも何かできないものかと話し合った。

 その結果、「ゴミ拾い」ではなく、こちらから「ゴミ集め」してしまおうと動き出す。呼び掛けに応えて当日砂浜に集合したカマゾウ会員と仲間たちは30人以上。お揃いの水色のTシャツ姿で花火をたっぷり楽しんだ直後、ゴミ袋を手に手に立ち上がった。すると暗い砂浜で全員が小さな小さな奇跡を体験することに。

 そして僕たちは来年、鎌倉花火大会が「日本一きれいな花火大会」を目指せることを確信した。

 

物語は一人の若者の熱い思いから始まった

「花火大会やります」

 4月21日、突然フェイスブックに投稿された松尾崇鎌倉市長の宣言に地元で生まれ育った若者の目が止まった。子どものころから毎年楽しみにしていた花火大会が中止になりガッカリしていたところだったので、うれしくて「何かお手伝いはできませんか」とその場で市長にメッセージしたという。そんな彼の思いがきっかけで、松尾市長をカマゾウに呼んで花火の話を聞くワークショップが実現した。

 

市長がカマゾウにやってきた

5月30日夜、市長を招いて会員15人とともにテーブルを囲んだ。中止になった経緯などを尋ねるメンバーは誰一人いない。「復活の経緯」「今年の花火大会にかける思い」「実施に向けての課題」、つまりこれからのことを聞き、みんなで「僕たちにできること」のアイデアを出した。「カマゾウ、すごいですね」帰り際、市長はそう言って階段を下っていった。いや、こんな場所にやってきて真摯に受け答えをしてくださる市長こそすごい。一つでもいい、絶対に何かやろう。僕たちは決心した。

 

待っていないでこっちからゴミを集めにいこう

市長の話を受け、7月19日まで時間がない中で何が実現できるか、平日夜に2度ミーティングを行った。課題を書き出してみると、観る側も受け入れる側も避けては通れないゴミ問題に行き着く。毎年翌朝にボランティアがゴミ拾いをしている。その苦労を軽減するために夜のうちに少しでも減らしておくことはできないか。野球やサッカー観戦に行くと試合の途中で係員がゴミを回収にやってくる。すると試合終了後のスタンドのゴミはほとんど残っていない。そうだ、花火が終わったらすぐにゴミ袋を持って周囲の人たちからゴミを集めちゃおう。みんなが捨てる場所を探したり、放置してしまう前に、「ゴミを回収します」「こちらへどうぞ」と。しかも、これなら僕たちもゆっくり打ち上がる花火を楽んでからやれるんじゃない?   こうしてカマゾウらしい楽しくゆるめのイベントがカタチになっていった。題して「花火大会を楽しく終わり隊~カマゾウビーチクリーン大作戦」である。

 

ビーチに謎の水色軍団現る

前日の荒天が梅雨明けの合図だったようで、当日は痛いほどの日差しが照りつけた。13時過ぎに先発隊が場所取りに由比ガ浜に向かう。16時を過ぎるとそこには、カマゾウTシャツの鮮やかな水色が増えはじめる。それは遠くからでもハッキリ確認できた。新興宗教か、選挙に向けての集会か、新商品のキャンペーンボーイ&ガールか。いずれにしても異彩を放っていたことだけは確か。飲んだり食べたり、しゃべったり、波打ち際で遊んだりしながら日暮れを待ち、花火が打ち上がるころにはその水色軍団はつに30人を越えたのである。

 

たっぷり楽しんだ後、一斉に立ち上がった

午後7時20分、「みんなでつくる」花火大会が開幕。予想を超える寄付が集まり2,500発から4,000発に増えたという花火に酔いしれた。鎌倉ならではの水中花火に歓声を上げた。カマゾウ以外の場所で、カマゾウの仲間たち皆んなで集まるのも実は初めて。とても楽しい時間を過ごすことができた。そしてフィナーレ。最後の花火が打ち上がると同時に、僕たちは立ち上がり全員が容量45リットルのゴミ袋を手に4人一組で浜に散らばった。「ゴミはこちらへどうぞ」「燃えるゴミはこちらへ」「ビン・カンはこちらへ」「ゴミステーションまで代わりに持っていきますよー」…暗闇にメンバーたちの声が響いた。

 

ゴミの数だけ奇跡が起きた

掛け声に応えるように見物客がゴミを差し出す。わざわざ持って来てくれる。座っていた人までもが次々と持って来てくれる。ゴミステーションがどこにあるのか分からず捨てる場所を探していた人もたくさんいたようだ。そして、ゴミを袋に入れる際に誰もが「ありがとうございます」「お願いします」と声を発してくれることに驚いた。中には「燃えるごみです」「ペットボトルなんですけどいいですか」とちゃんと分別を意識してくれている人まで。これほどまでに協力的で、しかも感謝の言葉までかけてくださるとは! ゴミの数だけ、人の数だけ、考えてもいなかったうれしい感動があった。僕たちも「ありがとうございます」「また来年もきれいな砂浜で会いましょう!」と返さずにはいられなかった。

 

帰り道は「カフェ鎌倉美学」経由で

見物客がわずかになった午後9時少し前に終了。分別して集めたにもかかわらずゴミステーションは分別できないほどのゴミの山が築かれていて、少し残念な気分で僕たちは浜を後にすることになった。帰りは御成通り脇にある「カフェ鎌倉美学」さんに立ち寄る。今回のプロジェクトに賛同してくださったオーナーさんがメンバーたちに1杯ごちそうしてくれるというのだ。ありがたい。店内は満席のため店の前でいただく。本当は食べ物もオーダーして気持ちにお返ししたいところだったが、後日あらためて伺うことにしよう。ここにも水色Tシャツの波が押し寄せる異様な光景が広がっていたのだ。

 

やってみたからこそ見えてきた課題がある

こうして一人の若者の思いに共感したメンバーたちの思いが大きなうねりとなって、「勝手にゴミ集め」イベントにつながった。実際に集めて回ってみたら、ほとんどの見物客は「ゴミはきちんと捨てたい」と考えていることを肌で感じることができた。この意識の高さに応える施策を考案し実行できれば、終了後に放置されているゴミほぼゼロを目指せるのではないかと思うのだ。

 

また、ゴミステーションは用意されているものの普段の海水浴客用であり、一気に15万人が押し寄せる花火大会用ではない。だから容量が極めて小さく分別さえできない状態だったこともよく分かった。

 

終わった瞬間から、僕たちは来年に向けて考え始めた。

美しい花火を見た海岸だから、美しいまま帰りたいと。

鎌倉の花火大会を「日本一きれいな花火大会」にするために、もっともっと大きなうねりにしていきたいと。

 

 

<カマゾウ会員のみなさまへ> 

●今回のプロジェクトはフェイスブックやホームページ、メルマガなどでもお伝えしましたが行き届かなかった点もあり「参加したかった」という声も寄せられました。たいへん申し訳ありませんでした。

 

カマゾウのヘビーユーザーたちがどんどん進めたわけでもなく、もちろん誰でも参加いただけた企画です。壁がないのがカマゾウのいいところですよね。来年はどのような形になるかまったく分かりませんが、ぜひ一人でも多くの参加をお待ちしています。本当は何もしなくてもきれいなビーチや公園、道路が一番なんですが。

 

●夜遅かったにもかかわらず翌朝の海岸から駅周辺までの「大掃除」イベントにも参加くださった会員の方も何名かいらっしゃいました。お疲れさまでした。

●今回、早い時間から場所取りに行ってくださった先発隊のみなさん、真正面という「特等席」で楽しむことができました。ありがとうございます。

●参加できないからと差し入れをくださったみなさん、ありがとうございました。お心遣いに感謝します。

●参加したかったけど平日で都合がつかなかった、でも興味を持ってくださったり、気持ちだけ応援してくださったという方にも感謝します。

●レーザーカッターを駆使してカマゾウ専用チカチカライトを人数分製作くださった会員さん、ありがとうございました。暗闇の中、遠くから確認できたため、持ち場がかぶらず効果的に動くことができました。

●トランシーバーを手配くださった会員さん、ありがとうございます。一斉に指示を伝えたり、確認できたりと大活躍でした。電話もつながりにくかったようですのでたいへん役立ちました。

●当日までリードしてくださった若いお二人にも感謝です。

 

多くの方の協力やアイデア、アクションで楽しく気持ちのいいプロジェクトになりました。皆さま本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。

保険にも加入しましたが怪我もなく終わることもできました。おっと、ひとつだけ、発案者のビーサンがいまだに行方不明です。見かけた方、ご連絡ください(笑)。

 

 

※ちなみに市長が書き留めてくださったアイデアの中から「会場へ行けない人を市役所の屋上に招待する」は、今年トライアルとして実行されました。カマゾウ会員一同、お礼申し上げます。